一般的に、私たちは1日の大部分を蓄尿してすごしており、適切な尿量がたまると尿意を自覚し、排尿が可能な状況となれば、意識的に排尿することができます。正常な蓄尿と排尿には膀胱と尿道が協調することが必要です。中枢神経(脳、脊髄)や末梢神経(骨盤内の神経)によってコントロールされ、正常な蓄尿・排尿が可能となっています。
一般的には排尿機能といわれる場合、蓄尿・排尿が含まれており、混乱を避けるため、専門的には下部尿路機能と称します。
この神経が障害されたり、尿の通り道に障害がある場合、排尿機能障害をきたします。
②下部尿路機能障害の原因
神経疾患(脳血管障害、脊髄疾患、腰部脊柱管狭窄症、糖尿病性神経障害、骨盤内手術による神経障害など)や前立腺肥大症、尿道狭窄症、骨盤臓器脱、認知症など、多岐にわたっており、単一の原因ではなく、複合している場合や、原因が明らかではない場合もあります。
③下部尿路機能障害による症状
蓄尿に関する症状、排尿症状、排尿後症状にわけられます。これらが混合する場合もあります。
- 蓄尿症状
頻尿、夜間頻尿、尿意切迫感、尿失禁が含まれます。
- 排尿症状
尿勢低下、尿線途絶、排尿遅延、腹圧排尿、尿閉などが含まれます。
- 排尿後症状
残尿感と排尿後尿滴下があります。残尿感はかならずしも有意な残尿は伴いません。
④下部尿路機能障害の検査
下部尿路機能障害の原因は多岐にわたっているため、問診(症状、服薬歴・既往歴)、身体診察、尿検査、残尿測定を行います。専門的な検査としては、超音波検査、尿量測定、尿流動態検査、膀胱尿道鏡を行うことがあります。
⑤下部尿路機能障害の治療
原因疾患に応じた治療を行います。排尿機能障害と蓄尿機能障害が合併している場合、通常、排尿機能障害の治療を優先させます。蓄尿機能障害を先行して治療した場合、残尿増加や尿閉といった事態に至る可能性があるからです。