わが国における1965年から10年ごとに行われている尿路結石症の疫学調査によれば、尿路結石症は年々増加しており、年間罹患率(1年間にこの病気にかかる割合)は2015年の時点で1965年の3倍となっています。
男女比はほぼ5:2で男性に多くみられますが、近年は女性の比率の増加傾向を認めています。
再発率も高く、腎結石での再発率は5年間で45%、10年間で60%とされています。男性では20-60歳代に、女性で閉経後の年代の女性に多くみられます。
尿路結石症の原因
尿路結石は主に腎臓で尿中のカルシウムや尿酸などの無機質の結晶とたんぱく質などの有機物が固まって、出来ます。尿路結石の原因は尿の流れの停滞や代謝異常症などの内科の病気・薬剤による影響などが考えられますが、80-90%はっきり原因がわかりません。
尿路結石の成分は、カルシウム(シュウ酸カルシウム、リン酸カルシウム)が90%で最も多く、次いでリン酸マグネシウムアンモニウム7.4%、尿酸5.2%、シスチン1.0%となっています。
また海綿腎、原発性副甲状腺機能亢進症や尿細管性アシドーシスといった内科疾患に伴ってみられることがあります。さらに体動制限や長期臥床状態では、尿流停滞や尿路感染を惹起して尿路結石を作りやすくなると言われています。内科の代謝異常として痛風や副甲状腺機能亢進症や、クッシング症候群、骨粗鬆症、膠原病や、サルコイドーシス、腸疾患(クローン病などの炎症性腸疾患、広範囲の小腸切除)などによる高シュウ酸尿によっても尿路結石症の発症する危険性が高くなります。
尿路結石症の症状
1.典型的な症状(腰痛、血尿、吐き気)
尿路結石の最も多い症状は背中や側腹部の強い痛みです。この痛みは夜中から明け方に多くみられます。他にも頻尿・残尿感などの膀胱炎のような症状、吐き気や嘔吐などもみられます。背中や側腹部の疼痛は尿路が結石によって急に閉じたことによって起こる腎盂内の圧力の高まりや尿管壁の過剰な動きにより生じます。夜間に多くみられるのは、夜間に尿が濃縮されるために、結石周囲の尿管が濃縮された尿によって腫れ閉塞が起こるからではないかと考えられています。頻尿・残尿感などは結石が膀胱の近くまで移動してくるとあらわれる症状です。また、吐き気、嘔吐などは自律神経を介しての腸管の反射性麻痺によるものです。血尿も症状のひとつですが、自覚できるほどの血尿(肉眼的血尿)でないことも多く、診断時に確認できる顕微鏡的血尿の場合が多くあります。また、尿路結石によって尿路が閉塞すると、腎盂腎炎を起こします。腎盂腎炎は重症化することがあり、緊急でドレナージを行う必要があります。また、閉塞状態が長引くと、たまった尿により尿路が広がり水腎症となります。水腎症が続くと、腎機能が低下します。
尿路結石症の検査
尿路結石症を診断するために、尿検査、レントゲン検査、超音波検査、CT検査が行われます。
尿検査:顕微鏡を使って、尿に血液や細菌が混じってないかを調べます。
レントゲン検査:結石の陰影を調べます。
超音波検査:水腎症の程度や結石の大きさ、位置を調べます。
CT検査:結石の大きさや位置、尿路の形態を調べます。
尿路結石に対する手術療法
長径10mm未満の結石は、飲水、運動などの日常生活指導のみで自然排石を待ちます。結石が出やすくなるような薬を使うこともあります。自然排石されない場合、長径10mm以上の結石の場合には、結石を体外に出すため手術療法を行います。手術療法には、体外衝撃波砕石術(ESWL)、経尿道的尿管砕石術(TUL)、経皮的腎砕石術(PNL)があります。
体外衝撃波砕石術(ESWL)
衝撃波を結石に照射し、結石を細かく破砕する方法です。ESWLによって生じた破砕片は尿とともに体外に排出されます。低侵襲で比較的安全に行うことが出来ます。
経尿道的尿管砕石術(TUL)
直径約3ミリの細径の内視鏡を尿路内に通して、レーザーで石を砕いて、バスケット鉗子などで石を取り出す方法です。内視鏡は軟らかく、先端が自由に曲がるため、膀胱から腎臓内まで治療ができます。ただし、20mm以上の結石では、複数回の治療や、他の治療との組み合わせが必要になることがあります。治療費は、約10-15万円程度です。詳細は外来で相談ください。
経皮・経尿道同時内視鏡手術(ECIRS)
ESWLやTULでの治療が難しい20mm以上の結石、特に珊瑚状結石などに対して行います。背中から腎臓の中まで腎瘻という通路を作り、腎瘻から内視鏡を挿入し、レーザーなどで石を砕きます。TULを併用して行うことで効率が良くなります。治療費は、約15-20万円程度です。詳細は外来受付に相談ください。
再発
尿路結石症は再発が多い疾患のひとつです。再発率は5年間で20%、20年間で80%といわれています。そのため、再発を予防することが大切です。
結石を予防する食事
1.水分
再発予防には1日尿量が2000ml以上となるように水分摂取をすることが必要です。食事以外に1日2000ml以上の水分を摂りましょう。
2.カルシウムの摂取をしましょう
カルシウムは腸管内でシュウ酸と結合してこれを便に排出させ、シュウ酸の吸収を抑制し、尿中シュウ酸排泄量を減らします。そのため、カルシウム摂取を制限するより、むしろ一定量のカルシウム摂取を行うことが勧められています。
3.シュウ酸を控えめにしましょう
シュウ酸を多く含む食べ物として、葉菜類の野菜やお茶類などがあります。結石を予防するために、シュウ酸の摂取を減らすことが大切です。また、摂取する場合にはゆでたり、カルシウムと一緒に摂取したりするとよいでしょう。
4.塩分を控えめにしましょう
食塩の過剰摂取は特にカルシウム結石の再発の危険因子となります。適度な塩分摂取制限が大切です。
5.高プリン食品を控えめにしましょう
高プリン食品の過剰摂取は、血清尿酸値を上昇させます。これが高尿酸尿や酸性尿を誘発するため、尿路結石ができやすいです。高プリン食品の摂取は控えましょう。